「楽しんでいますか?」
「はい、今日はありがとうございます」
「こうなると思っていましたよ」
「えっ?」
「あなたと近衛です。以前、この会に来たでしょう。
あの時、僕らも連れがいたのに、みんな珠貴さんが気になってた」
「そうですよ。珠貴さんと知り合いになろうと思ってるのに、ことごとく近衛に阻止された」
「まったくだ。近衛から、彼女に近づくなオーラが出てたな」
お友達のみなさんが口々にこんなことをおっしゃるものだから、私は返事に困ってしまった。
宗に助けを求めようと彼を探した。
そのとき、宗は他の方と話の最中だったが、私の視線に気がつくとものすごい勢いでこちらにやってきた。
「本来は婚約を祝う会ですが、結婚してから珠貴さんを連れてくるなんて、近衛もどこまでガードが固いのか」
「近衛の奥さんになったら、どうにもならないじゃいか。なぁ」
「なぁってなんだよ、文句あるか」
「おおいにあるね」
友人に言い返され、宗もむきになっている。
こんな彼を見るのも悪くないけれど、せっかく会を開いてくださったお友達のみなさんに申し訳ない。
「なんだかんだ言いながら、みんな楽しんでいるんですから、気にすることはありませんよ。
近衛のいい時も辛かった時も、知ってる仲間ですから」
「狩野さん」
狩野さんの言葉は、暗に宗の婚約解消の過去を語っている。
だから今夜は彼らを大目に見て欲しいと、狩野さんは続けた。
「珠貴」 と呼ばれ、返事をするまもなく、私は宗の手によって会場から連れ出された。
珠貴さんを連れて逃亡かとからかう声に 「酔い覚ましだ」 と不機嫌な声で応じている。
どこに行くの? と聞くと、外の風にあたってくると、ぶっきらぼうな答えだった。
アルコールに酔ったのかと心配になり、介抱が必要だろうと思っていたのに……
バルコニーに出たとたん抱きすくめられ、身動きが取れなくなった。
「……俺から離れるな」
熱を帯びた声が耳に届く。
今宵のキスは、シャンパンの香りがした。



