ボレロ - 第三楽章 -



「楽しんでいますか?」


「はい、今日はありがとうございます」


「こうなると思っていましたよ」


「えっ?」


「あなたと近衛です。以前、この会に来たでしょう。 

あの時、僕らも連れがいたのに、みんな珠貴さんが気になってた」


「そうですよ。珠貴さんと知り合いになろうと思ってるのに、ことごとく近衛に阻止された」


「まったくだ。近衛から、彼女に近づくなオーラが出てたな」



お友達のみなさんが口々にこんなことをおっしゃるものだから、私は返事に困ってしまった。

宗に助けを求めようと彼を探した。

そのとき、宗は他の方と話の最中だったが、私の視線に気がつくとものすごい勢いでこちらにやってきた。



「本来は婚約を祝う会ですが、結婚してから珠貴さんを連れてくるなんて、近衛もどこまでガードが固いのか」


「近衛の奥さんになったら、どうにもならないじゃいか。なぁ」


「なぁってなんだよ、文句あるか」


「おおいにあるね」



友人に言い返され、宗もむきになっている。

こんな彼を見るのも悪くないけれど、せっかく会を開いてくださったお友達のみなさんに申し訳ない。



「なんだかんだ言いながら、みんな楽しんでいるんですから、気にすることはありませんよ。

近衛のいい時も辛かった時も、知ってる仲間ですから」


「狩野さん」



狩野さんの言葉は、暗に宗の婚約解消の過去を語っている。

だから今夜は彼らを大目に見て欲しいと、狩野さんは続けた。

「珠貴」 と呼ばれ、返事をするまもなく、私は宗の手によって会場から連れ出された。

珠貴さんを連れて逃亡かとからかう声に 「酔い覚ましだ」 と不機嫌な声で応じている。

どこに行くの? と聞くと、外の風にあたってくると、ぶっきらぼうな答えだった。

アルコールに酔ったのかと心配になり、介抱が必要だろうと思っていたのに……


バルコニーに出たとたん抱きすくめられ、身動きが取れなくなった。 



「……俺から離れるな」 



熱を帯びた声が耳に届く。 

今宵のキスは、シャンパンの香りがした。