朝食は、和食と洋食が曜日ごとにバランスよく配置されている。
今朝は和食の献立が準備されていた。
食材の準備はハウスキーパーの三谷さんにお願いしており、下ごしらえが済んだ材料を調理するため、忙しい朝はとても助かっている。
「この味はなんだろう、最近よく口にするけど」
「塩麹よ。美味しいでしょう」
塩麹と聞いても興味のなさそうな顔をしているが、味の違いには敏感で、まろやかな味わいになるね。
と言いながら、切り身を美味しそうに頬張っている。
宗のアンテナは自分の興味のないものには反応しない。
基本的な料理の手順は頭に入っても、調理の技法や味付けは自分に関係はないと判断するようだ。
「三谷さんのお手製ですって。私も教えていただこうかしら」
「美味いものを覚えてくれるのは嬉しいが、仕事も忙しいだろう。
無理はして欲しくないな」
「無理はしてないのよ。
みなさんが気遣って、結婚したばかりだから早く帰るようにと言ってくださるの。
あなたもそうじゃない? 帰りが早い気がするんだけど」
「うん。予定を動かせない会食以外の日は、早く帰れと平岡がうるさいよ。
先輩がいない方が仕事がはかどります、なんて言ってる」
宗を早く帰すことで、平岡さんの仕事の負担は増えることになる。
それをあえて 「いないほうが仕事がはかどります」 と言えるのは、後輩である平岡さんだからこそ。
しばらくは平岡さんの好意に甘え、夕食の時間をゆっくり楽しませていただくことにした。
「午後から休暇だから、部屋の片付けをやろうと思ってるの。
実家の荷物は休みの日に一括で運び込むつもりよ」
「引越しだが、新しい部屋が決まるまで待った方がいい」
「新しいお部屋のこと、本気だったのね」
「冗談だと思った?」
「そうは思わないけれど、急だったから」
「立地条件にもよるが、こちらがのぞむ部屋の広さがあり、すぐ入居できる部屋は限られている。
ほどなく見つかるはずだ」
すでに何件か候補に挙がっているらしく、部屋が決まり次第、大きな荷物は新居に運び込むことにした。
「帰りは10時ごろになりそうだ」
「お食事は?」
「もちろん家で食べるよ」
「わかりました。待ってるわね」
部屋の片付けは急がなくていいよと優しい言葉を残し、宗は出勤していった。



