生地選びのあと、とても嬉しいことがあった。
宗のお母さまから、誕生日のプレゼントをいただいたのだった。
「気に入っていただけるとよろしいけれど……」 と渡されたのは、それは見事な真珠の指輪で、シンプルなデザインのリングとの相性も素晴らしい。
いただいた真珠の指輪は、知弘さんと静夏ちゃんの結婚式に指にはめるつもりでいる。
指輪といえば、宗の左手の指輪に気がつく人がとても多いという。
女性社員のほとんどが目に留めるらしく……
「会社ですれ違うと ”おめでとうございます” と言ってくれるよ。指輪の効果は絶大だね」
「そうでしょう。指輪は結婚した証ですから、これであなたに言い寄る女性もいなくなるといいけれど」
「そんな人はいないよ。それより珠貴のほうはどうだ、いろいろ言われるだろう?」
「えぇ ”見せてください” と言いながら、いきなり私の手をとる人もいるのよ。
私が結婚したことより、みなさん指輪のデザインが気になるのね」
自社ブランドでブライダルリングを扱っていないと社員の誰もが知っているため、私の指輪は 『初のブライダルリング』 であることから注目されている。
「みんな気になるんだな。いい機会じゃないか、売り出せばいい」
「そのつもりよ。漆原さんの記事を見てくださった方々から、すでに問い合わせが入っているの。
記事にオリジナルリングだと書いてくださったから、みなさんの興味を引いたみたい。
思わぬ宣伝効果があったわ」
「それはすごい。珠貴が指にはめるだけでも、いい宣伝になるね」
「あなたから初めていただいたイヤリングの時もそうだったわ。今回も同じような手応えを感じるの」
私が身に付けることで人の目に触れ、それから話題が広がっていくため、宣伝効果は絶大だった。
あらたな戦略が浮かび、頭の中は先々のプランで埋め尽くされていく。
宗と並んで歩きながら仕事モードに入っていた。
「結婚は発見の連続って言うけれど、今日のあなたには驚かされてばかりだったわ」
「俺もそうだ、俺が知らない珠貴に毎日会ってる」
「そうなの? 例えば?」
「例えば……寝坊するとか」
「やだ、意地悪ね」
明日を気にせず、ベッドの中で他愛のないことを言い合うのも楽しい時間だ。
意地悪な口と裏腹に、優しい手が私を抱きしめる。
「それだけじゃない、君も俺と同じだね。仕事のスイッチが入ると周りが見えなくなる」
「それは否定できないわね」
「だろう? 似たもの夫婦だ」
「夫婦」 の言葉は、まだくすぐったい。
宗の唇が肩に触れ、甘い疼きを感じながら安らぎももたらす。
今夜も、ベッドサイドで一対のランプが灯されている。



