小玉さんを助けた数日後 「あらためて礼をお伝えしたい」 ということで、娘さんとともに会社に私を訪ねると連絡をもらった。
聞くところによると、小玉さん親子の 「言の葉」 が話題になり、マスコミにもたびたび取り上げられるため 「鑑定」 を依頼する人があとをたたないそうだ。
占いや鑑定に興味のなさそうな秘書の堂本でさえ 「キョウコ コダマ」 の名を知っていたくらいだから、相当有名なのだろう。
そんな人がやってくると聞いて、社員の間で騒ぎになるのではと心配していたが、そのときお会いした二人の姿はごく普通で、社内で多くの社員と行き違ったが 親子が 「言の葉」 を伝える高名な人であるとは誰も気がつかなかった。
気配を消すとは、こういうことなのかと感心したものだ。
『今まで起こった出来事は、これから先のすべての事柄につながっています』
まただ……
私の意志とは関係なく、こうして時々声がする。
いままでに起こったことはすべてにつながるのか。
言葉をくり返したどるうちに、ある思いに突き当たった。
昭和織機の丸田会長が、なぜ急に私に接近してきたのか不可解だったが、近衛と須藤の接近を警戒したのではないかと考えればつじつまが合う。
私たちを引き離すために、それぞれに縁談を持ちかけたのではないか。
「珠貴、丸田会長から誰を紹介された。婿を探してやると言われたんだろう?」
「縁談は父がお断りしたわ。
断ったと言っても、今は考えておりませんと言っただけですけど……
それが何か?」
「それで引き下がる人じゃないだろう」
「そうなの。源田商会の息子さんはどうかと、何度もお電話をいただいているの。
これ以上の男はいない、私に任せれば間違いない、なんて一方的に押してくるのよ。
迷惑な話だと思わない?」
珠貴の言葉に目を見張った。
ここで源田の名前が出てくるとは思わなかった。
”今まで起こった出来事は、これから先のすべての事柄につながっています……”
小玉さんの言葉をもう一度噛み締めた。
「丸田会長とミマサカの社長が会っていたらしい。源田商会の社長も一緒にいたそうだ」
「考えられない取り合わせね。源田さんと美作さんは、どちらも敬遠なさっている間柄よ」
「今月に入ってたびたび会っているそうだ。どう思う」
「どういうことかしら……
私たちの知らないところで、何かが動き出しているとしか考えられないわね」
珠貴は話の重要性を早くも理解していた。
身を乗り出し私を見つめる顔に先ほどまでの甘さはなく、物事の真実を見極めようとする意欲的な表情が浮かんでいる。
丸田会長は近衛家と須藤家それぞれに相手を紹介し、仲介役として振舞いながらつながりを深めようという魂胆だろうと、私の見解を述べると、
「そうね、私も同感だわ。でも、それだけかしら。もっと何かありそうね」
「近衛とSUDO、両社が力を得るのを恐れているんじゃないのか?
丸田会長は、自分の影響力を残すために一計をめぐらしたんだろう」
「それには協力者が必要ね。SUDOが目障りな方を選んだってことでしょうね」
「それが美作さんか……」
唇を噛み締め悔しそうな顔をしていたが、その顔がふと変化した。



