トップシークレットですからと漆原さんに真顔で告げると、彼も真剣なまなざ
しでうなずき喉がゴクリと鳴った。
「結婚できない相手ではなく、二人の結婚は決まっています。
内々に結納もかわして、出産前には入籍する予定です」
「そこまで決まってるのに、なぜ隠す必要が?」
「漆原さんも知ってる人だよ……静夏の相手は、須藤知弘さんなんだ」
「須藤知弘さん……えっ、珠貴さんの叔父さんの?
最近、確か専務になったはずだ。ちょっと待ってくれよ、頭を整理するから……
宗一郎さんの妹さんが 『SUDO』 の専務夫人になるってこと」
「そうです」
「専務は次期社長候補の呼び声が高い。
ってことは、静夏さんは、いずれ社長夫人になるということで、
近衛家の兄妹が、相次いで 『SUDO』 のトップに関わってくるわけで……
宗一郎さん、俺、めまいがしそうだ」
そういうと、漆原さん頭をふらつかせた仕草とともに、ソファに大きくもたれ
かかった。
まいったな……と言いながら 「週刊誌に売り込みに行ったら高く買ってくれ
そうだ。あっ、これは冗談だから」 と驚きを冗談で紛らわせている。
漆原さんの顔をジロリと睨みつけた。
「悪い冗談だった。そんなことをしたら、俺は近衛宗一郎に一生恨まれる。
恨まれるだけじゃすまないな、この業界にいられなくなる。
アンタを敵に回すつもりはないよ……
ここまで教えてもらったんだ、秘密は絶対に守る。
マスコミの目を静夏さんに向けさせないためにも、
小宮山さんの件はできるだけ穏便に収める必要がありますね」
私も珠貴も、漆原さんと同じ意見だった。
今日発売の雑誌の記事には、ウソと本当が混じっている。
吸収合併の相手として名前が挙がった三社のうち、二社については記事の通り
だが、「スドウ」 の情報には誤りがあった。
一方、写真週刊誌に掲載された三人の女性のうち、二人についてはまったくの
でたらめで、珠貴と私の 「意外な関係」 の記事も事実ではないが、交際の
事実は否定できないものだ。
同日発売の雑誌二誌の記事の、一誌には誤りが含まれ、もう一誌には事実が
書かれている。
そのどちらにも珠貴が関係していた。
この忌々しい偶然に、歯軋りしたい思いだった。
昨年私たちが巻き込まれた異臭事件と誘拐事件で、あることないことを書き立
てられ、珠貴には辛く不安な思いをさせた。
二度とあのような目にあわせたくはない。
そのためにも、柘植さんと雅ちゃんには無言を通してもらわなければならない。
何より、漆原さんや狩野たち友人の力が必要だった。



