私の電話のあいだ、潤一郎を中心にそれぞれが動き出したようだ。
狩野は遅れて到着した霧島君に途中経過を説明しており、その背後では平岡と櫻井君が電話の最中だった。
柘植さんと蒔絵さんも沢渡さんを囲み打ち合わせをしている。
潤一郎に知弘さんとの電話で明らかになったことを伝えると、「こっちも新しいことがわかったぞ」 と低い声で伝えられた。
「浅見さんと関係があるとされていた中島だが、彼は浅見さんの弟だ」
「弟? 苗字が違うのは……親の離婚か」
「櫻井氏が中島にコンタクトを取っていた中でわかった」
「中島が浅見君の弟……彼女は弟が辞めさせられたことを恨んで、それで……」
「まぁ、待て。もうひとつ知らせがある。浅見さんの交際相手がわかった、浜尾課長だ」
「なに? それは間違いないのか!」
「あぁ、平岡が突き止めた。浅見さんと親しい女子社員の証言だ、間違いない」
「浅見君と浜尾課長が……広報誌の一件で課長も処分されている」
「部長のように辞めたわけではないが、部署をはずされた。浜尾課長も近衛に対してよい感情を持っていない」
潤一郎の話を聞きながら、私は三人の関係を整理した。
浅見君は弟である中島が辞めさせられたことを恨み、中島とマスコミを使った騒動を画策したのか。
それとも、浜尾課長が受けた屈辱をはらそうと加担したのか。
浅見君が首謀者なのか否か……潤一郎に問いかけた。
「誰が首謀者だろう」
「浅見さんか、または、浜尾課長かだろう」
「中島の可能性は?」
「ない。いま櫻井氏が電話をかけている相手が中島だ。中島は姉がやったことを何も知らなかったそうだ」
「では、珠貴が一緒にいるのか浅見君と浜尾課長ということか。
俺を誘い出すならわかるが、何のために彼女を連れ出すんだ。理由がないだろう!」
「落ち着け。平岡が浜尾課長の所在を確認している」
焦ってはいけないと思うものの、珠貴の安否を考えると気持ちが大きく揺れ動き、言葉が強くなるのだった。
なだめるように潤一郎が私の肩に手をおいた。
弟の手により、少しばかり気持ちが鎮まった。
待つほどもなく平岡の声がした。
「浜尾課長の動向がわかりました。都内のクラブで部下数人と飲んでいるそうです」
「同じ課の連中か」
「いえ、元の部下ということでした。それから、飲んでいるさなか浜尾課長に電話がかかってきて、それから落ち着かない様子だそうです」
「電話の相手は、浅見君ということも考えられるな……」
「そうなると、今現在、珠貴さんと一緒にいるのは、浅見さんだけだということですね」
沢渡さんが会話に加わってきた。
場所がわかればみんなで踏み込むこともできますねと、みなをおあるようなことを言い出した。
「踏み込むにしても、居場所がわからなければどうにもならないが、浅見秘書の自宅ではありませんね。
すぐにわかるようなところではないでしょう」
「沢渡さん、案外裏をかいて自宅ってこともあるのでは? いやいや、その可能性は薄いですね。
浜尾課長が所有するマンションかもしれない。
霧島先輩はどう思いますか」
「うん、平岡君が言うように浜尾課長のマンションもありえるね。また どこかのホテルか……
狩野君、どうだろう」
「ホテルの部屋に長時間の監禁というのは考えにくいね。従業員が異変に気づくものだ。
コンドミニアムならあり得るだろうがね」
友人たちがそれぞれに意見を述べ可能性を探っていく。
彼らの声を聞きながら時計へ目を走らせた。
夜中11時半近くになっていた。



