「七階までジャンプできるなんて凄いね」

「ヴァンパイアは人間よりも身体能力が優れているんだ」

ミーナはライルの姿をじっと見つめる。

別段、人間と変わったところなど見当たらない。

(如月君も地上からこの高さまでジャンプすることができるのかな?)

現実離れしすぎていて想像できない。

「ルネのように力の弱い者や、普通のヴァンパイアは血を飲まなくても問題ない」

「そうなの?」

ミーナの言葉にライルはうなずく。

「ヴァンパイアが様々な種族と交わっていくにつれて、『血を欲する』という本能が薄れて行ったんだ。だから高い身体能力を持っている事や人間界に来ると体が変化する事以外はほとんど人間と変わらない」

「変化するってどういう事?」

「俺は一応キングの血を引いているからこの姿を保っていられるが、普通のヴァンパイアは体が変化してしまうんだ」

ライルは自分の手のひらを見つめながら続ける。

「だが、キングの血を引いていると厄介ごともある」

「?」

「俺は……たまに凄く血が欲しくなるんだ」

低い声でライルがつぶやく。

「キングの力は強い。だからこそ人間の血を欲する」

ライルの整った顔が薄暗い部屋の中にぼんやりと浮かんでいる。