【完】ヴァンパイアとチョコレート

「!?」

男の手は驚くほど冷たい。

ミーナがびくりと肩を震わせていると、

「こっちにおいで~」

と男はミーナの腕をつかんだまま部屋に入る。

「え……!あのっ!」

「ハイ、座って」

男はミーナを革張りのソファに降ろす。

そこは先程ミーナがいた部屋よりも数倍広い場所だった。

灰色の床に黒を基調とした家具に真っ赤な絨毯。

テーブルにあるろうそくの明かりだけが頼りの薄暗い部屋だった。

「最近女の子と遊んでないから丁度良かったよ~」

(っ……どうしよう。早く帰りたいのに)

しかし、どうしてだか足が動かない。

まるでピンで縫いとめられたかのようだ。