【完】ヴァンパイアとチョコレート

ライルは小さな籠にピクシーを寝かせる。

「僕も小さいころアンバード様にいじめられたことがあるんだ。でも、ご主人で助けてくれて……」

ルネは金の瞳をしばたかせる。

「ミーナ、アンバード様に何かされてない?」

「ううん。大丈夫だよ……」

「そっか。よかった……。僕はこの子を静かなところに連れて行くね」

ルネは言ってピクシーが寝ている籠をそっと咥えた。

それから、しばらく二人でソファに座っていると、

「……血の匂いがする」

聞こえないくらい小さな声でライルがうめいた。

ライルはミーナの手を取ると顔を近づける。

「ほら、ここから血が……」

するとライルの瞳が妖しく光る。

獲物を前にした獣のような嬉々(きき)とした表情。

十字架を作った時にできた傷を、ライルはじっと見つめている。

「ラ、ライル君……?」