○車内、夜
月光にひきつる山下と悦子の顔。
(山下)「俺をゆする気か?」
(悦子)「・・・・・」

悦子、窓を大きく開ける。
シートベルトを確かめ、
ドアロックをはずす。

山道、カーブが続く。
(山下)「何とか言ったらどうなんだ?」
(悦子)「そんなんじゃないわ」

悦子、山下のシートベルトに細工をする。
(山下)「じゃ、一体何なんだ?あの時もう絶対、
俺の前には現れないって約束したじゃないか!」

(悦子)「・・・・・」
(山下)「俺にしてみりゃ、大金だったんだぞ!」

大きなカーブにさしかかり、悦子、
とっさに山下のハンドルにしがみつく。
(山下)「なにするんだーっ!」
急ブレーキの音。

○湖岸の崖、夜
湖岸の崖のカーブ。月光の中、
湖にダイブする四駆のスローモーション。

○水中、夜
月明かりで、浅い湖の底に
四駆が沈んでいるのが見える。

シートベルトをはずし、ドアを開け、
助手席から泳ぎ出る悦子。

山下は運転席でシートベルトがはずせず、
必死でもがいている。
もがき、息絶える山下の断末魔の顔。

○水面、夜
水面に浮上する悦子の顔。
月明かりに美しく映える。

○湖、夜
月光に映える湖の遠景。
沖に向かって泳ぐ悦子の波跡。

○湖岸
崖下の湖岸。
四駆が引き上げられている。
パトカー、救急車、警官、他。
木村刑事、山田刑事もいる。

(山田)「やはり事故でしょうね?」
(木村)「わからん。ブレーキ跡があるから
ハンドル操作を誤ったか、居眠りか、
眼の錯覚か、そこらへんだろう」

(山田)「先ほど、身重の奥さんが確認に
こられまして、それは可哀想で」
(木村)「それはそうだろう。生まれて
くる子もかわいそうだ。で?」

(山田)「帰り際に奥さんが?」
(木村)「?」
(山田)「何故スコップがあるのかしら?と」
(木村)「おとといはなかったのか?」

警官が駆け込んでくる。
(警官)「目撃者が現れました。コンビニで
昨夜若い女がこのバンに乗るのを見たと」

(木村)「若い女?」
(警官)「ええ、25,6の髪をアップにした
美人だそうです」

(木村)「よし、山田。すぐモンタージュだ」
(山田)「はい、わかりました」
山田と警官、木村に敬礼して去る。

木村、返礼したあと、湖を見ながら、
(木村)「殺すつもりだったのか?」