○スパーマーケット、店内、レジ前
山下レジに並ぶ。
髪をアップにして美しく化粧した悦子がレジにいる。
(悦子)「いらっしゃいませ。カードお持ちですか?」

山下、カードを出す。
(悦子)「お預かりします」
悦子、カードを通す。
(山下)「・・・・・」

悦子、カードを返す。
(悦子)「お久しぶりです。山下先生」
山下、悦子をまじまじと見る。

(山下)「えっ?か、各務原!」
(悦子)「いつか、お会いできると思って、
この町へ越してきました。ここへ電話してください」

悦子、紙片を渡す。
山下、まだ驚いている。
悦子、食材をバーコードに通している。

山下、紙片を手にしたまま見とれている。
悦子、目を合わせて微笑む。
(悦子)「以上でよろしいでしょうか?」

山下、我に返り紙片をポケットに入れる。
そこへ、絹江がポン酢の瓶を持ってくる。
(絹江)「これを追加してください。すいません」

悦子、瓶を受け取りバーコードに通す。
(悦子)「以上ですね?」
悦子、二人を見る。

二人、悦子に見とれている。
(絹江)「ひょっとして、各務原さん?陸上部の?」
悦子、微笑みうなづく。

(悦子)「そうです、田中先生、ごぶさたしてます。
この町へ越してきました」
山下、絹江、顔を見合す。

(悦子)「全部で9830円になります」
山下、財布から一万円札を出す。
絹江、カートを押してレジを抜ける。

悦子、山下につり銭を渡して、
(悦子)「どうもありがとうございました。
またおこしください」

悦子、次の客に対応する。
(悦子)「いらっしゃいませ。カードお持ちですか?」
まだ驚いている山下の顔。

○同、外
山下、カートを押している。
絹江が並んで歩いている。

(絹江)「各務原さん、すごくきれいになったみたい?ね」
(山下)「ああ、びっくりした」
(絹江)「気が付かなかったの?」

(山下)「全然。山下先生て言われて、まじまじと覗き込んだよ」
(絹江)「教え子が綺麗になるっていいことだわ」
(山下)「そ、そうだな」

○同、駐車場
二人、四駆のバンの所まで来る。
山下、助手席を開けて絹江を乗せる。

(絹江)「OK,大丈夫よ」
(山下)「袋、全部うしろに置くぞ」
山下、サイドドアを開ける。
カートの食材を移す。

(絹江)「お豆腐と卵を、つぶさないようにね」
(山下)「ああ、わかってる」
袋を積み上げながらこわばる山下の顔。
(山下)「・・・・・・くそっ!」