○湖岸、釣り場
岩場、周りに葦が生えている。
東山老人が孫娘アキと釣りをしている。
はるか遠くにボートが見える。

ボートの男の子が立ち上がる。
女の子も立ち上がり、二人争う。
弾みで二人水中に投げ出される。

遠くでよく見えない。
アキ、ボートのほうを眺めるが、
気付かず、釣り糸に集中する。
老人はずっと釣り糸を見ている。

アキ、再びボートを見る。
アキ、又釣り糸を見つめる。
ボートが近づいてきている。
アキ、ボートに気づき、

(アキ)「おふね?」
アキ、老人を見る。
老人、釣り糸に集中している。

(老人)「ふむ」
ボートもっと近づく。
アキ、声高に叫ぶ。

(アキ)「じいじ、おふね!」
老人、ボートに気付いて釣竿を置く。
アキも釣竿を置く。
二人、立ち上がりボートに近づく。

(老人)「はて?誰も乗っておらんぞ?」
老人、竿を取りに戻りボートにあて
手前に寄せる。
ボートにはかなりの水が入っている。

老人とアキ、覗き込む。
中の水に浮かぶ大きな空瓶。
(アキ)「じいじ、これなに?」

老人、手に取り目を細めて見る。
(老人)「睡眠薬じゃ。ま、とにかく、
警察に電話じゃ。アキ、帰るぞ」

(アキ)「うん」
二人、竿を手に釣り場を去る。

○山道
パトカーと救急車がサイレンを鳴らして走っていく。

○湖岸
パトカーと救急車がいく。

○同、釣り場
ボートの周りに警官と救急隊がいる。
木村刑事、山田刑事がいる。

(山田)「投身自殺でしょうか?」
(木村)「まあ、そんなところだろう」
木村の携帯が鳴る。
(木村)「はい、木村だ」

(携帯の声)「300メートル東方の岩場に
女性が一人倒れています。担架、願います」
(木村)「息はあるのか?」
(声)「息はあります」

(木村)「よし、了解!担架!急げ、こっちだ!」
木村、山田、葦の岩場を走る。
担架も走って付いていく。