○湖岸、キャンプ場
ここ数日の小春日和で道の雪は解けているが
周りには雪がまだのこっている。
湖の氷も融けかけてきている。

『氷上危険』のたて看板。
タクシーが1台来て止まる。
美しい着物姿の悦子が下りてくる。

(運転手)「夕方から天気が崩れますから気をつけてください」
(悦子)「ありがとう。友人が二人、車で来るから大丈夫です」
運転手、会釈して車走り去る。

悦子、氷の湖をじっと見ている。

○車販売店、外
店内の課長が見える。

○同、内
電話が鳴る。
課長が取る。

(課長)「はい、オート自販です。あ、奥さん、ご主人今
営業に出ています。確か三時にどこやらのメモが。
ちょっとお待ちください」

課長、鈴木の卓上を見る。
(課長)「鏡湖3時とメモに書いてあります」

○鈴木の家、内
瞳が電話をしている。
向こうにベビーベッドが見える。

(瞳)「鏡湖3時。分かりました。どうも」
瞳、静かに受話器を置き、宙を見つめる。

○鏡湖、キャンプ場
かなりの雪が残っている。
悦子が中央に立っている。

佳子の軽自動車が来て止まる。
ドアを開けて佳子が下りてくる。
(悦子)「おひさしぶり、佳子さん」

(佳子)「悦子さん・・・」
佳子、悦子の美しい着物姿に見とれている。
すぐにもう1台乗用車が現れる。

ドアが開いて鈴木が下りてくる。
(鈴木)「おひさしぶり。悦子さん」
(悦子)「お久しぶり。・・・3人だけの同窓会、
皆さん、お幸せのようですね?」

(鈴木)「山下先生を殺したのは悦子さんだね」
(悦子)「ホホホ、どうして分かるのそんな事?
あれは事故よ。山下はハンドルを切りそこなって湖
に突っ込んだのよ。私は運良く逃げ出せただけのことよ」

(鈴木)「やはりそうか。君は泳ぎが達者だから、
秋の湖でも・・・」
(悦子)「そうよ、へっちゃらよ」
開き直った悦子の顔。

○イメージ
湖岸の崖のカーブ。月光の中、湖に
ダイブする四駆のスローモーション。

○イメージ
水中、月明かりで浅い湖の底に
四駆が沈んでいるのが見える。
シートベルトをはずしドアを開け泳ぎ出る悦子。

山下は運転席でシートベルトがはずせず、
必死でもがいている。
もがき息絶える山下の断末魔の顔。

○イメージ
水面に浮上する、月明かりに美しく
映える悦子の顔。