○イメージ
夕暮れの東尋坊の遠景。

○鈴木の家、外
郊外の新築の一軒家。
鈴木の表札がかかっている。

木村刑事と山田刑事がやってくる。
表札を確かめ、
山田、インターホンを押す。

(女の声)「はーい、どちら様ですか?」
(山田)「先ほど電話いたしました福井県警の
木村と山田ですが」

(女の声)「はい、すぐ参ります」
玄関の扉が開いて、鈴木隼人と瞳が出てくる。
瞳は赤ん坊を抱いている。

(木村)「どうも、休日のところすみませんが、
この方ご存知ですね?」
木村、写真を見せる。

二人、のぞきこむ。
(鈴木)「各務原悦子?知ってます」
(瞳)「同じ陸上部でした。すごく
綺麗になったみたい、髪型かしら?」

(木村)「先日の鏡湖転落事故の参考人として
探してますが、手がかりが全くありません。
7年前のことで恐縮ですが、何か心当たり?

鏡湖の入水事件、山本太一君が亡くなった、
あの頃のことを思い出してもらえませんか」

(鈴木)「あの事件の数日前に皆でバーべキュー
大会をやりました、鏡湖で」

(瞳)「陸上部の卒業打ち上げで、山下先生と、
山本、各務原、竹内佳子、それと私達」

(木村)「全部で6人ですね?場所は?」
(鈴木)「西岸のキャンプ場です。(瞳を見て)佳子
は山本と小学校以来の同級生で仲がよかったよな?」

(瞳)「でもね、実は悦子から山本君に付きまとわ
れて困ったものだわと聞かされたことがあるわ」
(鈴木)「いつごろ?」

(瞳)「高三になってすぐの頃」
(鈴木)「悦子が山下先生を慕っていた事は、
皆知ってたよな?」

(瞳)「そう、それは。それとなく皆が知ってたわ」
木村と田中ずっとメモを取っている。

○美容室、内、朝
開店前の美容室の中。
竹内佳子が、木村、山田と話している。

(佳子)「そう、あのバーベキューの時、瞳が、
山下先生いつ田中先生と結婚するんですか?と
質問して、山下先生どぎまぎして、あの時の

山下先生を見つめる悦子の目は異常でした。そうそう、
あの時悦子が言った言葉を思い出しました」

○イメージ
7年前のキャンプ場。
バーベキューの食材を点検しながら、
肉を串に刺している悦子、佳子、瞳。

(悦子)「そんなもん、なかなか結婚なんて
でけへんわ。ふん。はよ食べよ」
瞳と佳子、顔を見合す。