「あ、あの…渕野くん」
私たちはいま安部先生のデスクに課題を置きに行ってるんだけど、
「なに?」
何事もないように笑いかける渕野くん。
「やっぱりわたしも少し持つよ…」
そう、渕野くんが課題を全部持ってる状況なのです。
わたし一枚も持ってません。ただ隣で歩いてるだけ、って感じ。
「いや、これくらい持てるから(笑)」
って言って笑う。
わ、歯がとっても綺麗…じゃなくて、
「わたし何も持ってないよ?」
なんか申し訳なくて俯いちゃう。
「あはは! 普通にラッキーありがと!とかゆえばいいのに。律儀だね!しかもわざわざ着いてきてくれるし」
とか感心されちゃってるし…
「一応、日直なので…なんか渕野くんにだけ任せちゃうの悪いなぁ〜って思ったの」
「うわ、いいやつ!笑」
またニッって笑ってくれた。
笑顔が素敵だと思った。
なんだかその笑顔にとても引き込まれた気がしたの。

