けれど、陰があるなら光もある。
まぶしい光を私は毎日見てみぬふりをつづけてきた。

これからもずっとそうすれば目が痛くなることもない。



だけど、それは簡単ではなかった。



越えられない壁がそこにある。

今の私は目を瞑っても脳裏に光が射し込んで背けることが出来なくなっていた。



その原因は私が嘉山さんの連絡を無視し初めて、夜寝れなくなった頃

一ヶ月半前くらいだった。



夏を控えた梅雨の時期。
しとしとと降りしきる雨を眺めて待ち人を待つ。

自宅の最寄り駅からはだいぶ離れていてしいて言うなら大学よりの駅。 それも一度も降りたことのない駅で当たり前のように行き交う人も見慣れた人はただの一人も居なかった。

「すみません。 えっと、君が恵美ちゃん?」

中年で小太りのスーツを来た男性がおずおずと私に歩みよる。
今日のお客さんは初見の人だった。

「はい。 山本さん、ですよね?」

俗に言う営業スマイルと言うものでその人に微笑みかける。
山本さんはデレッと笑って私に手を差し出して来た。


汗ばんだ肉厚な手を見下げて、ちょっとだけ躊躇する。


「はい」

私はそれを顔には出さないまま、手を握り返した。

「駅前にホテルが有るんだ。今日はそこでもいい?」

手を繋いだ形で歩き始める。
今日のヒールは低めにしたせいか大柄の山本さんは熊のように見えた。


返事をしようと思って張り付いた笑みで山本さんを見上げる。


前方を向いていた山本さんは

それに気づいてふと視線を絡めて笑う。





声を発しようとした時

私は後ろ髪引かれるような感覚で身体が動かなくなった。





「あの!」

疑問に思う暇も与えず、背後から声がする。



振り返ろうとして目に入った私の肩に乗っていた手を見ると

私が動けなくなった原因がわかった。



その手を伝い声を発した人へと視線を辿る。

振り返ったその先に二人の男女が私達に視線を向けていた。


「ごっごめんなさい…あの…」


いつの間にか鋭くしていたのか肩から手を離した女性は怯えた声でそれを引っ込める。

私は盗みみるようにその二人の顔を見比べて息を詰まらせた。






「もしかして、恵美ちゃん…?」