「じゃ、アツヤ君、おやすみなさい」 「あぁ、おやすみ……」 桃香が家に入るのを見届けて、きびすを返す。 そうだった。 トモアキの授業料……。 マスターの借金の返済は、もうどうでもいい。 いっそあんなヤツ、警察につかまっちまえばいい、とさえ思うけど……。 トモアキ、やっぱり、高校やめんのかな? なんとかしてやりたいけど……。 自分の無力さを思い知らされながら、俺は、重い足を家へと向けた。