部屋はいつもどおりだ。
ただ、トモアキが言ったように、金庫の扉が開いていた。
もちろん、テーブルの上に置いてあったアタッシュケースも、なくなっている。
「叔父さんの行き先に、心当たりは?」
おっさんがトモアキに聞く。
「さぁ、わかりません」
若手刑事が、金庫から紙切れを取り出した。
「これを見てください」
おっさんがそれを受け取る。
「借用書だな……。
君は叔父さんが、借金をしていたという話は聞いてるか?」
聞かれたトモアキは、首をかしげて答えた。
「話は聞いていませんが、人相の悪い人たちが、店に、金を返せと怒鳴りこんできているのは見たことがあります」

