マスターが、金を持ち逃げした。


その事実が、じわじわと現実味を帯びてくると、手が震えてきた。



なんで?


どうして?



その言葉だけが、頭の中をぐるぐる回る。


悔しくて、悲しくて、腹立たしくて、言葉にならない。


信じてたのに……。


なんで、よりによってマスターが……。


小さい頃から、俺らの面倒見てくれてたじゃん!


いつだって、俺とトモアキをかわいがってくれて。


俺とトモアキの、唯一の大人の味方だったのに!