マスターは、手ぶらの俺とトモアキを交互に見ている。
いつもの席に着きながら答えた。
「今日のところは、会長に持って帰ってもらった」
「会長って、えっと、沢木君?」
「あぁ」
「え……、彼ひとりに預けて大丈夫なのか?
4900万だぞ?」
「大丈夫。
会長の部屋、鍵かかるらしいから」
「いや、そうじゃなくて……。
彼は信用できる男なのか?」
マスターらしくない言い方に、眉をひそめる。
「信用?
会長がひとり占めしないかって意味か?
アイツはそんなヤツじゃねーよ」
少しムッとしながら答えたけど、マスターは、俺の不機嫌には気づかない。

