桃香は、さびしそうに微笑んで、トモアキの描いた絵を見た。
「苦い思い出だけど、次こそ、ちゃんとした恋をするための、これは、私の宝物。
私の心を動かしたのは、ほかのどれでもない、この絵だから」
「そっか……」
絵を見る桃香の目は、長いまつ毛に半分隠されて、少し大人びて見える。
なんか桃香、一歩先に進んじまったみたいだな。
置いていかれそうな不安と、つかまえたい焦りで、今までよりいっそう、ひきつけられる。
そんな桃香から、目が離せないでいると……。
――タンタンタンタン!
階段の方から大きな足音が聞こえてきた。
そして……。

