りかとそんなことをやっていたら、開演時間の3分前になった。
衣装チェックのため、舞台袖に行く。
「頑張ってね、」
みんなにそう言われ、わたしは笑顔でうなずいた。
この話は、母親に家を追い出されたヘンゼルとグレーテルが、
わざと魔女の家に出向き、魔女を殺してから火をもらって帰り、
家に火を放って母親を殺す、という話だった。
なんともすごい。
でも原作も、けっこうな酷さらしい。
わたし達が読んでいたのは、オブラートに包まれたものだったのである。
わたしは深呼吸をして、海斗を見た。
海斗は真剣な面持ちで、ステージを見ていた。
だが、わたしの視線に気づいてか、こっちを見た。
そして、ニヤリと笑う。
「楽しもうな、劇も。」
それを聞いて、わたしも笑った。


