そして、わたしは椎斗と目を合わせ、うなずいた。
「ですが、わたし達の本業は、歌、ですよね?」
わたしが意味あり気に問いかけると、会場が盛り上がった。
「なので俺ら、歌っちゃいます!」
椎斗がそう宣言すると同時に、イントロが流れ、歓声が渦巻いた。
まずは、椎斗が歌い出す。
あの勢いまみれの声が、隣で、飛んでいた。
でもわたしも負けじと、いつも通り歌い始める。
歓声も、掛け声も、全て規則性のあるAmiKaのものに変わっていく。
サビに差し掛かる直前、チラリと椎斗を見た。
すると、椎斗もわたしを見ていた。
それがなんだか嬉しくて可笑しくて、2人でニヤリと笑って息を吸った。
宣伝のはずが、普通のライブステージになったのは言わなくてもわかるだろう。


