おかしな二人



「もしもし」

電話の相手は、便利屋の社長だった。

実は、水上さんに雇われたあとも、便利屋の仕事だけは、地味に継続していたんだ。
だって、いつ水上さんに首を切られるかも分からないし、便利屋の仕事だけになったとしても、あれなら他のバイトに比べてお給金もいいから、一時しのぎにもなる。

久しぶりの依頼は、擬似恋人。

今の彼女と別れたいが、なかなか納得してくれず、婚約者がいることにしたいらしい。
それで、その彼女と三人で顔合わせだとか。

こんな依頼は、珍しい。
しかも、汚れ仕事でもないのに、あたしの取り分は破格だった。

たった一.二時間ほど婚約者のフリをするだけで、この金額は、ウハウハ。

おんぼろ上着を脱ぐ日も近いぞ、明!

右手の拳を高々と掲げ、嬉しさに頬が緩む。