あたしは、冷蔵庫からよく冷えた水を二本取り出し、一本を英嗣に渡す。
もう一本は、蓋を開け、酔って、うぅ、うぅ。言っている哲さんを抱え起こして、飲ませようと試みる。
背中に手を回し起こそうとすると、ぼんやりと目を開ける哲さん。

「うぁ……アカリちゃんやぁ。久しぶりやなぁ」

酔って呂律の怪しい口調で、それでもニコニコと話し出した。

「お久しぶりです。あの、これ。お水です。飲んでください」

ペットボトルを手渡すと、それを掴み損ねた哲さんがあたしに抱きつくような姿勢になった。

「あわわわ」
「こらっ! 哲! 離れいっ!」

それを見た英嗣が、慌ててあたしから哲さんを引き剥がす。

勢いをつけて離したせいで、哲さんの体がずるりとソファからずり落ちた。
頭から床に落ちた哲さんは、情けない声でぐぇと苦しそうに洩らしている。

「うわっ! 大丈夫ですか!?」

その姿に、落ちた本人よりも、見ていたあたしが慌ててしまった。

「ほっとけ、ほっとけ。自業自得じゃ」

英嗣は、落ちた哲さんをそのままに、あたしの手を引き傍から離した。

「つれないやんけぇ~」

哲さんは情けなく呟くと、アルコールのせいか痛みを感じていないらしく、モゾモゾと自力でまたソファの上へと這い上がった。