タクシーで来たおかげで、どっちへ行けば駅なのかも判らず、あたしは明け方の道をただ闇雲に歩いていた。
寒さが否応なく体中に纏いつく。
知らず流れていた頬の涙が、凍りついていくようだ。
なんで……?
どうして……?
巧く考えられない脳内には、この二文字だけが只管に、グルグルと巡っている。
抱えていたコートを羽織、握り締めていた携帯に目を落す。
「英嗣……」
助けを求めるように、その名前が漏れ出る。
そうして、別れ際に言ってくれた言葉を思い出していた。
―――― ちゃんと、戻って来いよ……。
その言葉だけを道標のようにして、あたしは大通りを探した。
「帰ろ……。帰らなくちゃ……」



