「いやっ!」
残りほんの僅かの距離で、あたしは凌から顔を逸らした。
「明……」
寂しげな凌の声が、降って来る。
「いやだ……。こんなの、いやっ!」
あたしは、凌を突き飛ばす。
ふらついた凌が、シンクの端に手をついた。
その目が、悲しみに揺れていて見ていられない。
「あ、あたし。帰るね……」
目も合わせず言って、リビングに置きっぱなしにしていたコートと携帯を手に取った。
逃げるように玄関へ向うと、凌が叫ぶ。
「あかりーっ!」
悲痛な叫びを受け入れることなど到底無理で、あたしは振り返ることもなくマンションを飛び出した――――。



