「美味しいね」
水上さんへ同意を求めるように口にし、あたしは目を細めてコーヒーのカップを口元へと運んだ。
「せやな。本格的に淹れとる感じやな」
分かっているのかいないのか、水上さんはズズズッと音を立て、緑茶をすするようにしている。
そんな姿に、あたしは苦笑いを浮かべた。
「なぁ、あかり」
「ん?」
カップを口元へ持って行くと、背凭れに寄りかかったままの水上さんが視線をはずすようにして問いかけてくる。
「昨日の事やけど……」
昨日……。
凌と出かけて遅くなった、昨日のイヴの事か。
「兄貴は、どんな感じやった?」
「え? どんなって……普段どおりだったけど……」
「そおかぁ。兄妹で、どんな話するん?」
水上さんは、世間話のように昨日の事を訊いてくる。
「どんな話……」
あたしは、一緒に暮らそうと言われた事を思い出す。
あたしのために、と凌が用意したらしいマンションの一室。
ずっと責任を感じ続けていた凌が、一緒に暮らすのを望んでいる事を。



