おかしな二人



「あ、そうだ」

凌が、内ポケットからハードなセラミックの名刺入れを取り出した。
そして、一枚をテーブルの上に出し、店員さんを呼ぶと、ペンを借りて裏側になにやら書き始めた。

「これ、俺の今住んでるところの住所と連絡先な。なんかあったらいつでも尋ねて来ていいぞ」
「大丈夫。なんもないから」

あたしは笑いながら受け取り、よく見もせずに財布の中にしまった。

「明は、やりたいこととかないのか?」
「やりたいこと?」

「親父の借金のせいで、今まで犠牲になってきたんだ。これからは、俺も一緒に借金を返済していくし、一緒に暮らせば家賃や光熱費なんかも浮くだろ? そしたら、明も自分のやりたいことをしたらいい」

凌は、あたしが一人で家を借りて暮らしていると思っている。
だから、一緒に暮らせばその分が浮くだろうと言いたいのだ。

けれど、実際は家賃などかかっていないどころか、すべてまかなって貰った上での現在のお仕事。
あたしが今稼いでいるお金は、ほぼすべて借金返済へとあてがうことができている。

だから、凌の気持ちはありがたいけれど、現状を変える気はない。