『一緒に行く相手がおらへんのか?』 そう訊く水上さんの声が、若干明るく感じるのは気のせいだろうか。 友達も彼氏もいないあたしの事が、そんなに可笑しいか。 ちっ。 「ええ、残念な事に」 水上さんには見えないけれど、欧米人さながらに肩を竦ませる。 『やったら、今度は俺が付き合おうてやる』 「え?」 水上さんのセリフに、あたしの時間が止まる。 周囲のざわめきもかき消えるほど、あたしの思考は制止してしまった。