おかしな二人



出かけた先の街は、気が早く。
ビルのあちこちが電飾で彩られていた。
並木道に並ぶ木たちにも、鬱陶しいほどの飾りつけがしてある。
けれど、夜になれば、きっと色とりどりの光を放ち、通りを行く人たちの心を更に躍らせるのだろう。

店内に入れば、お決まりのクリスマスソング。
並んでいる商品も、そういった類のものが目立っていた。

「クリスマスなんて、まともにした事ないし」

サンタの置物を軽く指先で弾き、独り言のような愚痴をもらす。

幼い頃に、母と二人でクリスマスを祝った記憶は薄っすらある。

確か小さなケーキを買って来てくれた母が、ろうそくを灯しジングルベルを歌ってくれた。
あたしは訳も分からずただ嬉しくて、ケーキを口一杯に頬張ったんだ。

山崎の家に入った初めの頃は、ケーキを父親が買ってきてくれていた。
それを、まだ仲の良かったあたしと凌は、仲良く半分ずつして食べた。

けれど、その時既に借金が嵩み始めていたのか、クリスマスプレゼントなるものは一切なく。
ただ、両親の見守る中、凌と小さなケーキを突いているだけだった。