酔った父は、手がつけられず。
あたしは、ただ部屋の隅で小さくなるしかなかった。

凌は、酔っ払って支離滅裂になっている父に向って、二度と戻らない、勘当だっ! と言い放ち、本当にその後、山崎の敷居をまたぐ事はなかった。

その時だ、一緒に行こうと言われたのは。

あの時のあたしは、まだ父の借金の凄さがよく理解できず、ただ兄貴のいじめから逃れられる方がずっといいと考え家に残った。

けれど、もしもあの日、兄について行っていたら、あたしの人生はどうなっていたんだろう……。