店員さんの、“いらっしゃいませ”に目もくれず、あたしは階段をまたズカズカと上る。 凌の奴は、さっきと同じようにこっちを見て座っていた。 「あかり、戻ってくると思ったよ」 コートをチラリと見てから、あたしを見てニコリとする。 「それ、取りに来ただけだから」 あたしは、コートをむんずと掴む。 「寒くないのかな、と思ったんだよね」 寒いに決まってんだろっ。 まぁ、怒りで駅に着くまで気がつかなかったけどさ。