「コート、気に入ったか?」

ペットボトルを握り締め、節目がちに訊ねられ、あたしは素直にお礼を言った。

「うん。ありがとう。凄く気に入った」

実際、あんな高価な物を買ってもらえる理由なんて、これっぽっちもない。
きっと、あたしがあまりに貧乏すぎて、不憫に思えたのだろう。
なんせ、八年物のコートを後生大事に着ているくらいだからね。
ワインなら、そうとう良い味出ている頃だよ。

そんな極貧のあたしを、わざわざショップまで連れて行き、好きなコートを選ばせた上に、食事までご馳走してくれるんて、心底嬉しかった。

それに、誰かから何かをプレゼントして貰うなんてこと、もうずっとなかったこと。