水上さんは、そんなあたしの表情を見て可笑しさを噛み殺すようにクックッと小さく声を出しうつむいている。

くっそー。
こバカにしちゃってさー。
なにさ、なにさっ。
ふんっ。

なんて、ちょっと膨れてはみたものの、コートを買って貰える嬉しさにそんな小さな小競り合いさえ、楽しくなってくる。

他にも同じタイプのグリーンのタータンチェック柄やグレンチェックのチェスターコートなど大人びたもの。
学生が好みそうなダッフルやピーコートもあった。

一通り袖を通してみたけれど、やっぱり一番初めに着た、赤のコートが自分には合っているみたいだった。

もう一度最後にそのコートを着て、鏡の前に立ってみる。