黒髪の少年

シルビアはアレンの頭を見た。
「あんた、短いくせに、髪綺麗ね」
「え、そうかな...」
そういって、アレンは
自分の髪をいじりはじめた。
シルビアは人の事を褒める事が
苦手なのだ。
「す、素直に受け止めなさいよ。
あたしが折角褒めてるんだから」
「あ、うん...ありがとう。
でも僕、この髪は
あまり好きじゃないんだ」
「どうして？」
「だって真っ黒だよ？
父上も母上も金髪なのに、
僕だけ真っ黒なんだ。
あんまりこの事で悩む事は
ないけどね」
アレンは優しく、
けれど悲しそうに微笑んだ。
「...あたしは好きよ」
「え？」
「黒髪。嫌いじゃないわ。
いいじゃない、違ったって。
あたしなんて親と同じ所を
探す方が難しいわよ」
「あはは。ありがとう、シルビア」
「どうして礼を言うのよ」
「君と話してると、元気が出たから」
「あぁ、そう」
「君...」
アレンはシルビアの顔を覗き込んだ。
「な、何よ...」
「やっぱりいい人だ」
「な、何言ってるの？大丈夫？
あたしそろそろ帰るわ」
立ち上がり、アレンに背を向けた
シルビアの顔は、僅かに赤かった。