黒髪の少年

あの日から、アレンは
今まで以上に元気になった。
「アレン、最近は機嫌がいいな。
何か良いことでもあったのかい?」
父も嬉しそうだった。
「はい、父上。大切な人が出来ました」
アレンは幸せそうに答えた。
けれど、その人物を答えてはならない。
「ほう。それは誰だ?」
「それは教えられません」
隣にいた母がオホホと笑う。
「アレンも大人に近づいているのです。
あなた、分かって差し上げて」
アレンもいつかは彼女と結婚して、
こんな夫婦になりたいと思っていた。
(でも、相手がシルビアだと知ったら、
父上や母上はやはり拒むだろう)
アレンはまた少し悩んだ。
でも前よりは悩んでいなかった。
もし、シルビアとの結婚を
認めてもらえない時は、
世界の果てに逃げてでも
シルビアと暮らす。
アレンはそのくらいの覚悟をしていた。
そのために、少しずつではあるが
準備を積み重ねていた。