黒髪の少年

幸せなひとときも束の間。
気づけば空は暗くなっていた。
それでもシルビアには、
その空は昼間のように明るく見えた。
「送ってくれてありがとう、アレン」
シルビアは幸せそうに微笑んだ。
「うん。おやすみ、シルビア」
アレンも幸せそうに微笑んだ。
そして。
アレンは突然、顔を
シルビアに近づけた。
シルビアはそれを拒む事なく、
アレンの唇を受け入れた。
アレンの唇は思ったより柔らかく、
優しい彼に包まれるような、
そんな気がした。
嬉しいというか、心臓が甘く
とくんとくんと
波打っているようだった。
「おやすみ」
アレンは耳元で低く囁いた。
「おやすみ」
背中を向けて去って行くアレンを、
シルビアは姿が見えなくなるまで、
愛おしそうに見つめていた。
少しして、今までの自分との
ギャップに驚いた。
「あたしがあたしじゃないみたい」
そう一言呟いて、扉を開けた。