黒髪の少年

「この海はいいよね。
何故だか誰もいないから」
アレンは海を眩しそうに眺めた。
そんなアレンを見て
そうね、と相槌するシルビアも
海を見つめていた。
「会う時は、此処で会いましょう」
その時、アレンはふと
シルビアの手を握った。
シルビアが自分の手に、
少しだけ近づいてきた気がしたから。
「えっ」
シルビアも驚いていた。
「シルビアの手は冷たいね」
「心が冷たいからよ」
「でも実際は暖かいじゃないか。
少なくとも僕はそう感じるよ。
それに、手が冷たい人は
心が暖かいってよく言うじゃないか」
アレンは優しい笑顔を
シルビアに向ける。
「ふふ、ありがとう。
でもそういうアレンは、
手が暖かいのね」
「ああ。心が冷たい証拠だよ」
アレンは苦笑した。
「そんな事ないわ。
アレンはとても暖かい人よ。
国の人々や王家の使用人にも
愛されてるじゃない」
「あはは。性格はやっぱり、
身体で決めるものじゃないね」
「そうね...」
その後も、アレンとシルビアは
夕日が沈みかけるまで
くだらない話をしていた。