黒髪の少年

会うくらいならいいじゃないか。
そう思い続けるアレンは、
次の外出日までその事を考えていた。
唯一の友達に会いたい。
その思いが度々稽古の邪魔をした。
「アレン王子、此処の所
調子が悪いですよ?悩みがあるなら、
私が相談に乗りますが」
稽古の先生がアレンを心配している。
いつも元気で明るいアレンが
こんなに無表情な顔を見せるのは
初めてなのである。
だから皆、今のアレンと
どう接していいのかが分からない。
父も母も分からないのである。
アレンにもそれが何なのか
分からない様だ。心の何処かで、
モヤモヤする事があるのかもしれない。
「ありがとうございます、ケビン先生。
ですが自分でも分からないのです。
この心のモヤモヤは、
何から出来ているのか」
というのは嘘だ。
本当は、本人だけは分かっているのだ。

久しぶりの外出日の時、
アレンは真っ直ぐあの海へ向かった。