パタンッ
「……」
ドアを閉めて、そのままドアにずるずると座り込む。
「なにやってんだろ……俺……」
馬鹿じゃないのか?
中学生にもなって兄貴に抱きつくって、どんな子供だよ。
着替えながら兄貴に抱きついた時を思い出してみる。
確か勢い余ってこけそうになった俺を受け止めてくれてたっけ。
あれ。
兄貴も抵抗してなかったような。
多分びっくりして抵抗できなかっただけなんだろう。
「はぁ……はやく着替えよ」
ブレザーをハンガーにかけた時、何かが手にあたる感覚がした。
「なんだろう、……本?」
こんな本持ってたっけ?
本というのには少し躊躇われる黒一色で、文字一つかかれていない。
「本なのに薄い……」
試しに本を開こうとすると、コンコンッと控え目な音がして、ドアが開く。
俺は急いで本を背中に隠した。
「あっ、ごめん、着替えていたか」
「いや、いいよ、全然」
兄貴の視線がこちらを向いている気がして、Tシャツを着る手を早めた。
「で何?兄貴」
「あ、うん。ご飯出来たから呼んだだけ」
「分かった。終わったらすぐ行く」
パタン。
「ふぅ……」
無意識にため息が出た。