「……はぁ」
テスト前はいつものようにため息をついて家に入る。
「あれ、母さんいないのか」
いつもならもう帰っている筈なんだけど、今日に限って残業らしい。
自分の部屋に電気をつけると、ベットに倒れこんだ。
「あーもう！なんで俺がこんな目にあわなくちゃいけないんだよ」
自分の頭の悪さに嫌気がさす。
俺の馬鹿馬鹿馬鹿。
しまいには、涙がでそうになった。
「ただいまー」
「！」
兄貴が帰ってきた！
すぐさま兄貴の元へと急ぐ。
でそうになった涙は引っ込んでいた。
「兄貴！」
「わっ、どうした？」
兄貴に飛びついた。兄貴は驚いた顔をすしたけど、すぐに優しい表情になった。
「またいじめられたの？」
「……うん」
兄貴の胸板に顔を寄せるとあの頃と変わらない、いい匂いがした。
優しい手が、俺の頭を撫でる。
さっきまででそうになっていた涙は嘘のように沈んでいた気持ちが軽くなった。
どうしてか兄貴に撫でられると不思議な気持ちになって、気がつけば気分もよくなる。
不思議だ。
「もう大丈夫？」
「うん。兄貴、……ありがと」
「それはよかった。今日は僕が夕飯を作るよ」
「分かった。着替えてくる」