「ふ〜ん。そんな天才と知り合いなんだ」

知佳子も、男の背中を見つめ、

「名前はなんていうの?それに一緒にいた女の人も綺麗な人だったね」

自然と微笑んだ。

「久沓義景だよ。最近、日曜礼拝にはまっているらしい」

長谷川は、荷物を持ち上げた。

「日曜礼拝って…。向こうにある教会か。いろんな人が参加してるみたいね。あたしも時間があったら、行ってみたいなあ〜」

知佳子は、ため息をついた。




「僕は、君に感謝をしているよ。キリスト教を知ることで、僕は神を知ることができた。そして、キリスト教が発明…いや、発見したというべきか。罪の定義を知ることができた。いや、それだけではない。僕は君に…あ」

愛といいかけて、久沓は照れたように咳払いをした。

そんな久沓の様子を、少女はただ優しく見守っていた。




「その時、連れていた彼女が殺されたのは…それからすぐのはずだ。そして…」

久沓は、犯人達を殺した。

「…」

長谷川は拭った汗を見つめた。






久沓が初めての殺人を犯した数ヶ月後。

とある事件が起こった。

広大な土地を持つ地主の実の息子が、殺人事件を起こしたのだ。

その息子は、変な性癖を持っており、その最中に…過って殺してしまったのだ。

地主の息子は、コネと金を使い、病院を開業していた。

それにより、その殺人は…医療事故として処理された。

しかし、性癖は止まらない。

再び息子は、ある女を標的にした。検査と称して、診察室の一つに、女を監禁した。

そして、息子がプレイを開始しょうとした時、閉めたはずの扉が開いた。

「愛なき行動に、破滅を」

入ってきたのは、久沓だった。

「何者だ!」

息子が声を上げるのと、久沓が自家製の爆弾を投げるのは、同時だった。

「心配するな。音は抑えているよ」

「ぎゃああ」

息子が断末魔の叫びを上げ、監禁されていた女は部屋の角で震えていた。

「ど、どうした!」

爆発音ではなく、息子の叫び声に気付いた地主が、診察室の扉の前に慌てて飛び出してきた。

「やあ〜」

久沓は、ゆっくりと振り返り、地主である父親に微笑んだ。