町外れのぼや騒ぎが起こった数時間後、大規模な爆発が地方都市の一角を震わせた。

「愛なき行動には、破滅を」

影は笑うと、遠くから火柱を眺めながら笑った。

影の名は、久沓義景。

数学者としては、天才と…小学生で言われた男。

しかし、その彼が愛したのは、こう言われる人物であった…障害者と。

天才は、凡人をせせら笑う。

それは、優越感。

しかし、どこか…疎外感も伴う。

そんな天才が、彼女に感動し、涙し…一方的に愛を感じた。

それは…生きるという本質を彼女から感じたから。

生物界に天才はいらない。

生と死のプログラムもできているから。

久沓は、突然の彼女の死を体験して知った。

己の無力さと、この世のくだらなさ。

この世に溢れる天才は、金と名誉を求め、優越感を浸る。

天才とは…その程度のものなのか。

いつしか、久沓はそんな疑問を抱きながら、生きていくようになる。

真の天才とは…理解できないなの。

凡人が理解し、金を得れる天才など天才ではない。

(真の天才ならば!生死の境を越えられる!)

久沓が唇を噛み締めると、更なる火柱が天に向かって発生した。

(俺は、半人前の天才だ。君を生き返らすことは、できない。だけど!)

火柱は次々に、上がった。

(死に関しては、天才であろう)

久沓は、火柱達に背を向けた。

「それが、久沓義景のありようだ。君を殺し、殺した相手を守るこの国を死へと誘う存在だ」

久沓の愛する彼女は、権力者の戯れで死んだ。

その日から、彼は生きる道を選んだ。

彼女を殺した…暴力と権力を逆に滅する為に、彼はその道を進む。

この国自身を滅する為に。

「所詮…今の権力は、明治時代からの新参者」

久沓は歩き出した。