この世には、2つしかない。

有と無。

生命ならば、生と死。

究極にはそれしかない。

金持ち、貧乏、美、醜…。

そんな価値観を越えて、生命には、生と死しかない。

だけど…僕は、死を選んだ。

自殺ではない。

僕は、生を貫き…死へと導かれたのだ。



数日前、僕は目の前で愛する人を失った。

僕もまた、重症を負ったが、助かるつもりはなかった。

最後の力を振り絞り、僕は彼女の遺体を人目のつかないところに移動されると、そのそばで死を待った。

彼女から腐臭が漂いだしても、僕は嫌とは思わなかった。

ただ…。

(彼女を救えなかった)

愛する気持ちは…僕の気持ちは時を得る度に、増していく。

だけど、彼女を救えなかった事実は、僕を責めた。

生と死。

そんなものを越えて、僕の気持ちはある。

それは、愛だ。

(愛は)



「そう…愛は、生も死も越える」

少年が静かに息を引き取るのを、ずっと見守っていた影があった。

影は、死んでもなお…彼女を見つめる少年の目をそっと閉じると、彼らの遺体に火を点けた。

「迷うことなき思い!それは、純粋なる思い!愛なり」

影は、燃える二人に敬礼をすると、その場から歩き出した。