あれから、浩が全力で奪おうとしているのは感じるんだけれど、自分の心が少しでも浩に揺らぐのを感じない私。



 今だってそう。“好き”といわれても、それに特別な意味を感じることが出来ない。



 もう少しであれから1年が経とうとしている。私も浩も、変わらないままだ。



「林檎、好き。本当は手だって出せるんだけど……」



 私のベッドに図々しく寝転がり、私をじっと見つめてきた。



「でも、出さないんでしょ?」



「うん。俺、そういうところはこう見えてちゃんとしてんの」



「そう」



 すっと伸びてきた彼の手が、私の長い髪を撫でて去っていく。



 彼は壁の方に向き直り、眠り始めた。