お兄さんもそう思ってくれてたのが分かって、嬉しかった。
黙ってしまった私をさらにグッと引き寄せて
「ホラ、言って?」
優しく尋ねてくる。
私はごくりと唾を飲み込んで、ゆっくりと自分の名前を口にした。
「池波琴莉(いけなみことり)」
初めての自己紹介。
初めての個人情報。
自分の名前なんて何度も言ってきたのに、すごくドキドキした。
そして私も尋ねた。
「お兄さんは?」
尋ねてからわずか1,2秒の沈黙が緊張を呼ぶ。
じっと見つめると、その唇がゆっくりと名前を形どって動いた。
「神楽千歳(かぐらちとせ)」
かぐらちとせ。
心の中でそう繰り返して、フフッと笑った。
「なぁに笑ってるの? ことちゃん?」
私の名前を聞いて、揶揄するように私をことちゃんと呼ぶお兄さん。
初めて、
初めて呼ばれた、私の名前。
涙が出そうになるのを堪えて、私は言い返した。
私がことちゃんなら……
「笑ってないよー、ち、ちぃくんっ」
「ぶははっ! 何、ちぃくんって」
「えー、千歳だからちぃくんだよ」
「はははっ」
大きな口を開けて笑うお兄さんに、ううん、ちぃくんに私もつられてアハハと笑う。
やっぱり、ちぃくんの傍に居るのはとっても楽しくて幸せだ。
そう私が思った瞬間、グッと抱きしめられて、両手は私の背中に回された。
ギュッとギュッと力を込めて抱きしめる腕。
私を離さないって言うように。
そして……
黙ってしまった私をさらにグッと引き寄せて
「ホラ、言って?」
優しく尋ねてくる。
私はごくりと唾を飲み込んで、ゆっくりと自分の名前を口にした。
「池波琴莉(いけなみことり)」
初めての自己紹介。
初めての個人情報。
自分の名前なんて何度も言ってきたのに、すごくドキドキした。
そして私も尋ねた。
「お兄さんは?」
尋ねてからわずか1,2秒の沈黙が緊張を呼ぶ。
じっと見つめると、その唇がゆっくりと名前を形どって動いた。
「神楽千歳(かぐらちとせ)」
かぐらちとせ。
心の中でそう繰り返して、フフッと笑った。
「なぁに笑ってるの? ことちゃん?」
私の名前を聞いて、揶揄するように私をことちゃんと呼ぶお兄さん。
初めて、
初めて呼ばれた、私の名前。
涙が出そうになるのを堪えて、私は言い返した。
私がことちゃんなら……
「笑ってないよー、ち、ちぃくんっ」
「ぶははっ! 何、ちぃくんって」
「えー、千歳だからちぃくんだよ」
「はははっ」
大きな口を開けて笑うお兄さんに、ううん、ちぃくんに私もつられてアハハと笑う。
やっぱり、ちぃくんの傍に居るのはとっても楽しくて幸せだ。
そう私が思った瞬間、グッと抱きしめられて、両手は私の背中に回された。
ギュッとギュッと力を込めて抱きしめる腕。
私を離さないって言うように。
そして……

