ちぃこと1

 だけど、ホントに私なんかのためにココに居てくれてるのかな?

 もしこの扉を開けて、お兄さんが居なかったら、私どうしたらいいんだろう。

 そう思ったら、扉を開けるのが恐すぎて、手が震えた。

 けど――



 バーンッ



 無情にも、私の意思と関係なく目の前の扉が勢いよく開いた。


 「遅いっ!!」


 って、懐かしのお兄さんの声付きで。

 「扉の小窓から頭が見えてんの。待ってんだから早く開けてよ。待ちきれなくなった俺が恥ずかしいだろ?」

 コツンと私の頭を軽く小突くお兄さん。

 けれど今目の前で起きた状況についていけなくて、私は化石みたいに固まったまま。

 「こーら。さらに無視するな。とりあえず入りなよ」

 そう言ってクイッと私の手を引くと体を引き寄せると、お兄さんは後ろの扉をガチャンと閉めた。

 どうやら高校の教室は鍵がかかるらしい。

 ――って、鍵!?

 「お兄さんっ。鍵まで必要?」
 「……第一声がそれ?」
 
 ため息をつくお兄さん。

 それに私も、ようやく二人で居た時の空気を思いだしてプハッと笑った。

 「ごめんなさいっ。開けて居なかったらと思ったら、恐くて開けらんなかった」
 「約束、しただろ? 俺破る奴に見える?」
 「そ、そんなんじゃないけど……」
 「まさか、俺が落ちてたと思ってた?」
 「いや、それとも違くて」
 「はぁ……じゃあ俺だけが楽しみだったの?」

 いつかの時みたいに、寂しそうに瞳を揺らしたお兄さん。

 やだっ。

 お兄さんのこんな顔、見たかったわけじゃない―――