「止め」
その言葉を聞いたと同時に、思い切り肩の力が抜けた。
全ての力を出し切ったというか……まさに、精も根も使い果たした、がぴったりだ。
後ろから回される解答用紙を受け取り、前に回すと同中の麻生真理亜(あそうまりあ)が振り向いて、小さくピースをしてきた。
私と小学校からの付き合いであり、大親友のお嬢様だ。
もちろん私から見れば、お嬢様というだけなんだけど。
いろいろな説明を受け、解散となった時にはどこからともなくはぁーとため息が聞こえた。
皆、やり切った顔だったり、不安そうだったり、もう遊ぶぞーって感じだったり。
思い思いの表情を浮かべていた。
私はと言うと……やり切った! なんだけど。
「帰ろうっ」
真理亜が満面の笑みで私を見て、立ちあがった。
この顔は、遊ぶぞーだな。
そう思った瞬間
「ねぇねぇ、プリクラ撮りに行こう! 受験記念ー」
「ふふ、いいよぉ」
予想通りだったことに小さく笑いながら、かばんを手に取った。
みんながぞろぞろ出て行くのに続いて教室を出ると、開口一番真理亜に尋ねられた。
「どうだった? 試験の出来は」
ニヤリと笑うその顔に、私はさっくの真理亜と同じピースサインを送る。
「ほんとぉ?」
「うん。あれでダメなら、もうどこも受かんない」
「はははっ、頑張ってたもんねーほんとに」
「うん」
ブンブン頭を縦に振って、頷いた。
2月から、元を辿れば11月から……なんだけど、かなり頑張ってきた。
私の所属していた華道部では、秋の交流会がメイン行事だったから3年の最後の活動が10月まで続いていた。
ほかの部では大体夏休み前で終わるところ、この時期まで3年生が活動しているのは珍しくて。
だから夏前でテニス部の活動を終えていた真理亜は、私の心配をずっとしてくれていたのだ。
ちなみに華道部の先生は、華道の集中力を持ってすれば、十分に勉強も両立出来ると言う考え方の持ち主だった。
それが試験に生かされてる――と思いたい。

