「ご……うかく、だって。は、はははっ! やったー!!」
壊れた様に空笑いした後、ぴょんぴょん飛び跳ねて母に抱きついた。
「うわーん。良かったよぉぉー」
「おめでとう」
「うん、ありがとお母さん。私、まだ頑張るから」
「大丈夫よ、きっと」
そう言って、私の頭を久しぶりに撫でてくれた。
お兄さんより小さくて、柔らかで……そして愛情にあふれたその手で。
優しく何度も私の頭を撫でてくれた。
――――――
そんなこんなを乗り越えて、私は公立高校の……つまり、お兄さんの通う学校へと来ていた。
夢にまで見た、憧れのT高―――
とまではいかないけれど、私はこの日が待ち遠しかった。
目指したのは、塾の先生に言われた一言だった。
どうせなら学区一のレベルの高いT高目指したらどうだ? みたいな。
最初は、3つ下のF高を上げていたんだけれど、そこじゃあもったいないと言われた。
私がF高を受けたかった理由は、セーラー服を着たかったから。
ここらへんの学校は、最近私服化が進んでいて、私立の高校は別として公立では私服が広まってきた。
そんな中、私の学力的にT校かF校しか制服がなかったのだ。
明らかにT校はレベルが高いので私の眼中にはなかったんだけど……
塾長直々にやってみろって言われて、ちょっとテンション上がって決めた。
みたいな感じだったんだけど。
それに、決めたからにはそれに負けたくない自分もいて。
何よりも、お兄さんに会うためにはもうここで頑張るしか私には道が残ってなかった。
ギュッと、ポケットのお守りとボタンを握りしめる。
「始め」
お兄さん、私に力を貸して下さい―――
そう祈り込めてから、ポケットから手を出し鉛筆を握った。

